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やる気がないと今のウェブでは学ばない

梅田 能動的に学ぶ意志のある人たちには、強制力はあまり必要ないかもしれません。けれども、教育全体を考えた時には、意志の力が弱くてずるずるいってしまう人にも、オープンエデュケーション(ウェブで学ぶこと)が有益な道具となるように、いろいろな工夫が必要になってくるでしょう。

飯吉 20年以上前の話になりますが、「『教育メディアの特性』と『学習の能動性と受動性』の関係を調べる」という研究をしていたことがあります。研究の結論は、「ハイパーメディアの教材を使った学習は、万人にとって効果が高いものとは言えない」というものでした。たとえば、「学ぶ内容に興味がない人にとっては、受動的なメディアである映画やテレビを同じ時間観るだけの方が、学習効果が高い」「学ぶ内容について、あまり知識を持ってない人は、ハイパーメディアでは学習を進めにくい」「受動的な気質の人も、ハイパーメディアを使った学習にはあまり向かない」というようなことがわかりました。つまり、知的好奇心ややる気がある人には、ハイパーメディアのような双方向メディアが向いていて、そうでない人は、映画やテレビなどの一方向メディアを使った方が、よく学んだり知的刺激を受けたりできる。

梅田 とても納得できる研究結果ですね。ただコンテンツがウェブ上にたくさんあるだけでは、よほど意欲がないと、人間は弱いから、楽しいことをして時間が過ぎていってしまいます。

p182-186 ウェブと能動性

ウェブで学ぶ ――オープンエデュケーションと知の革命 (ちくま新書): 梅田望夫, 飯吉透

やる気のない人にどうやってやる気をもたせるか

梅田 やる気のない人にどうやってやる気をもたせればいいのか.

斎藤 モチベーションを上げるには,「あこがれ」と「習熟」が2本柱と思っています.「あこがれ」というのは,これがすばらしいんだとあおられて,その気になってやってみること.「習熟」というのは,「練習したらできた」というような限定的な成功体験.すべてにおいて成功するのは難しいのですが,限定的な成功体験があると,「できるって面白い」と思える.

斎藤 突破体験のようなものがあって,自分の限界よりもう少しできてしまう.それが1人では難しいのだけれど,みんなでやればできるし,僕がいる空間であれば必ず達成させてあげられるという思い込みがあります.

梅田 だから,暗誦や音読など,全員が突破体験できるものを型にして,ということをおやりになっている.

斎藤 基本的なことも提案しているのですが,ハイレベルのものをこなしたということも自信になると思っているので,ゲーテや小林秀雄やドストエフスキーも小学生にぶつけるんですね.一番レベルが高いというものでもできるんだということを伝える.あるいは,高校の文系の数学の終わりが微分・積分だから,中学生に微分・積分を教えて,一応理解させることができると,自信が生まれる.そういう,限界を突破した果てにあるものを見せることによって,あこがれとともに,「ああ,このくらいはいけそうだ」という,ある種の構想力をもてるのです.

できる人というのは,「このくらいできればいいんだ」ということから逆算してやるので,落ち着いた努力ができるのですが,できないといわれている人の多くは五里霧中で,いくらやっても努力が無駄な気がしてしまってできないということがあります.要は,限定的でも成功体験を共有することによって,落ち着いて上達のプロセスを構想できるようにする.そのときに,「熱」は必要です.リーダーに熱がないと,不思議と化学反応は起きない.

p84-88:「あこがれ」と「習熟」より

Amazon.co.jp: 私塾のすすめ ─ここから創造が生まれる (ちくま新書): 齋藤孝 梅田望夫: 本